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  • エ: 今から10数年前、当時ネットを使って作品を作っている珍しいアーティスト同士として、江渡浩一郎と出会った。彼とは、ネットの、そしてメディア・アートの激変した10年を歩んできた「同郷の士」という感覚がある。いま彼は、産総研※1に在籍し、集合知をテーマにした研究や書籍の執筆、実用的なサービスの開発などといった活動に力を注いでいる。
  • エ: 年の瀬の取材は、1年を振り返るところから話が始まった。
  • エキソニモ(以下エ): 「2010年はどんなことをやってましたか?」 
  • 江渡(以下江): 「朝から晩まで論文執筆だね。新しい作品を作りたくてウズウズしてるw」 
  • エ: 「この号が1月に出るので、この取材のテーマは江渡さんと干支を掛けつつw、2011年のwebについて話せたらと」 
  • 江: 「2010年は、結局twitter※2の年と言える。1月にキャズム※3を超えた」 
  • エ: 「何かキッカケがあったんですかね?」 
  • 江: 「2009年12月にウェブ学会※4というシンポジウムに参加したんだけど、その頃に発表された論考に『日本でのtwitterの“キャズム越え”は、まだまだ先の出来事』と書いてあった。でも、年が明けて首相がtwitterを始めた辺りから、一気にキャズムを超えたみたい」 
  • エ: 「ustreamも躍進しましたね」 
  • 江: 「twitterやustreamが普及して、言論の場がフラットになったね。webが一段階進んだように感じる」 
  • エ: 「90年代のweb初期の感じもありますね」 
  • 江: 「そうそう。webが本来の姿を取り戻したとも言える」
  • エ: 「twitterはどう思います?」 
  • 江: 「素晴らしいと思うけど、議論の土台としては使いにくい。もちろん、議論しにくいようにデザインされてるからだけど。まとめシステムとして今はtogetter※5があるけど、もっとwiki※6の思想を取り入れたら、使いやすいシステムにできるんじゃないかな」
  • エ: 「tumblr※7はやりますか?」 
  • 江: 「以前は中毒だったよw tumblrは、ティム・バーナーズ=リー※8の考える理想のwebに近いんだよね」 
  • エ: 「そうなんですか?」 
  • 江: 「バーナーズ=リーは、もともとブラウザから任意のwebページを編集できる環境を構想していた。その理想を実現したのがwiki。tumblrは、元のページは書き換えられないけど、引用することによって彼の思想に近い環境を実現している」
  • エ: 「最近は、facebook※9も注目されてますが」 
  • 江: 「あんなの新しくもなんともないよw」 
  • エ: 「facebookには、mixi的な閉鎖空間に戻った息苦しさを感じました」
  • 江: 「持論なんだけど、日本はコミュニケーションメディアの最先端なんだよ。掲示板だと2ch、snsだとmixiという形で日本が最先端だった。パクリとはちょっと違うけど、mixi的な生ぬるい馴れ合いの価値がアメリカで再発見されたのがfacebookでは? でも『いいね!』ボタンはいいね!w」 
  • エ: 「いいね!は、はてなスター※10に似てますよね」 
  • 江: 「はてなスターは普及には至らなかったけど、『いいね!』ボタンの先を行ってたよね。これも、日本が最先端の事例の一つだよ」
  • エ: 「スマートフォン※11も面白いと思うんです。位置情報サービスは、まだ未開拓な感じがしますが」 
  • 江: 「foursquare※12は、離陸にまでは至らない気がする。mayorという制度で価値を捏造しようとしたけど、やっぱりヤラセ感が強い。セカイカメラ※13もがんばってるんだけど、場所を中心としたコミュニケーションは共感させるのが難しい。以前から『モノを中心にしたsns』と『ヒトを中心としたsns』の2つの方向性があって、今生き残ってるのはヒト中心だけ。その代表がtwitter。そんな中で、モノ中心で唯一面白いのがinstagram※14だよ」 
  • エ: 「え、あのオシャレなtwitpic※15みたいなやつが?」 
  • 江: 「表面的にはそう見えるせいでよく誤解されるけど、あれは本質的にはネットワーク構造が新しい。iphoneアプリ中心の設計になっていて、webからはほとんどの部分が隠蔽されてる。webにはユーザーページすらない。これは実に新しいよ」 
  • エ: 「わざとそうしてるんですかね」 
  • 江: 「かなり緻密に考えられてる。写真というモノを媒介として、共感によってつながるネットワーク。僕はgirls' networkって呼んでる」 
  • エ: 「girlsってことはboysもある?」 
  • 江: 「twitterみたいな『言語のコミュニケーション』は、論理によってつながっていくから、boys' networkって呼んでる。それに対して、instagramはもっと感覚的につながる」
  • エ: 「具体的に、どういうことですか?」 
  • 江: 「たとえば、ふと夕日の写真を撮ると、それに対してlikeがいくつも付く。つまり、写真の内容じゃなくて、共時的な感覚が共有される。普通に“夕日きれいだね”という」 エ:「夕日の写真なんていうありふれたものがスポッと感覚にハマる感じ?」 
  • 江: 「面白いだろうと狙って撮った写真は、逆にあまりlikeされなかったりw」 
  • エ: 「ナルホド。またしてもコンテンツの危機ですねw」 
  • 江: 「最近のwebサービスは、作り込む部分がコミュニケーションやサービスの部分になってきていて、コンテンツは本当に一瞬で消費されてしまうね」 
  • エ: 「それはすごく感じています。ところで、話飛んで、以前江渡さんのアイコンがgacktだったんですが、あれはナゼ?w」 
  • 江: 「それは・・・ごにょごにょごにょ(本人希望によりカット)」
  • エ: 「・・・ たぶん、江渡さんとwebにまつわる話は延々と続けられる。そんな中で、お互いに同意したことが一つ。
  • エ: 「webの未来は予測不可能」、つまり2011年がどんな年になるかは、知ったこっちゃねーということだ。
  • エ: 「ノーフューチャーもとい、未来は自分で作れ! byアラン・ケイ※16。というわけで今年もよろしく!! ※1~16 ググれ!